緊急抗議

2012-01-29

東京電力は、原子力紛争解決センターの和解第1号事案において、紛争解決センター和解尊重義務を堂々と踏みにじってきました。
このような暴挙が許されれば、紛争解決センターによる原子力賠償問題の解決は、およそ不可能となります。
また、被災者の原発賠償問題解決の方途は、著しく狭められてしまいます。

そこで、埼玉弁護団としては、緊急に、東京電力に対して厳重抗議を致します。

紛争解決センター第1号事件和解案に対する東京電力回答への抗議

<東電は、「被害者の方々への『5つのお約束』」を遵守せよ>
紛争解決センター第1号事件和解案に対する
東京電力回答への抗議

平成24年1月29日
原発被害救済弁護団(埼玉)       
団長 弁護士海老原夕美

平成24年1月26日、東京電力は、原子力損害賠償紛争解決センター1号事件において、同センターが示した和解案(以下、「本件和解案」という。)に対して回答を行ったが、東京電力は、同センターの仲介委員が示した和解案をそのまま受け入れず、被災者にとって重要な条項である慰謝料の総額を拒否し、同センターがあえて設定しなかった本件の和解時における仮払い補償金の精算条項の明記を求めるものであった。この東京電力の回答は、東京電力自身が平成23年10月28日に原子力損害賠償支援機構と共同で申請しその後政府により認定された「特別事業計画」の中で掲げた「被害者の方々への『5つのお約束』」にも反するものである。すなわち、東京電力は、「被害者の方々への『5つのお約束』」の中で、「被害者の方々の立場に立ち、紛争処理の迅速化に積極的に貢献するため、原子力損害賠償紛争審査会において提示される和解案については、東電として、これを尊重する」旨うたっている。それにもかかわらず、被災者にとって極めて重要な点について和解案を拒絶したことは、東京電力自身が約束した「被害者の方々への『5つのお約束』」にも反するものであり、政府や国民に対する約束を守っていないといわざるをえないし、中間指針すら無視するものである。
当弁護団は、東京電力の回答に対し、強く抗議する。

第1 慰謝料について

本件和解案では、慰謝料につき月額10万円のほか、被害実態に合わせて加算分の金額(申立人各自金50万円の増額等)を認めた。
これは、昨年8月に緊急に提示された中間指針において、「中間指針に明記されない個別の損害が賠償されないということのないよう留意されることが必要である。東京電力株式会社に対しては、中間指針で明記された損害についてはもちろん、明記されなかった原子力損害も含め、多数の被害者への賠償が可能となるような体制を早急に整えた上で、迅速、公平かつ適正な賠償を行うことを期待する。」と明記されており、中間指針は、被災者の賠償金額の最低限を明示しているに過ぎず、個々の事情による慰謝料の加算を認めているからである。
しかしながら、東京電力の回答は、中間指針の趣旨に反するものであり、到底許されるものではない。

第2 清算条項の主張

本件和解案では、「清算条項」を入れていない。
これは、本件和解案に「清算条項」を入れるということは、被災者が未だ避難所や仮設住宅、借り上げ住宅において極めて不安定な生活をしていることや、被災者が自由に自宅を訪れることすらできず、自己の被害算定が十分にできない段階にあることに鑑みると、不十分な被害請求金額で賠償を打ち切ることを意味し、適正な賠償ができなくなる恐れがあるからである。
しかしながら、東京電力は今回の回答において、本件和解案に「清算条項」を入れることを要求してきた。
このような東京電力の主張は、被災者に極めて過酷な条件を押し付けるものであり到底許されてはならない。

第3 仮払い補償金の早期清算の主張

本件和解案は、仮払金については、最終的な損害が確定するまで精算しないものとした。
これは、被災者が突然の原発事故に巻き込まれ、当面の困窮する生活を支えるために受領した仮払金については、現段階で清算しなければならない法的義務がないからである。また、実質的にも、現段階で直ちに、仮払金の清算を求めることは、再び被災者を困窮におとしめることになり極めて不当な結果になるからである。
しかながら、東京電力は、仮払い補償金の早期清算を主張した。
被災者が、今なお、避難所等で辛酸を極める生活を送ることを強いられていることからすれば、その自立のためにも、現時点での精算など認められるものではなく、東京電力は、「損害が最終的に確定した段階で精算すべき」とした本件和解案を受諾すべきである。
以上の次第であって、当弁護団は、原子力損害賠償紛争解決センター1号事件について、同センターが示した和解案について東京電力が行った非人道的ともいえる回答に、厳重に抗議するとともに、「被害者の方々への『5つのお約束』」を遵守し、全ての被災者に尊厳ある生活を営む権利を、直ちに実現するよう強く求める。

以上
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